« お弁当箱 | トップページ | 夏の終わり »

2009年6月19日 (金)

約束

 ずいぶんと涙もろくなったものだなあ・・・

 ぼくは一冊の文庫本を読み終えてこころの中でつぶやいた。

思えば小説に熱中したことなんてはるか遠い昔だ。

すくなくともここ20年は読書らしい行為から遠ざかっていた。

特にひとりの作家にはまることなどまるでなかったのだが・・・

 きっかけは中学2年の息子である。

彼は学校からもらってきた推薦図書の注文用紙を見せながら

遠慮がちに言った。

「この本が欲しいんだ、無理ならいいけど・・・。」

 我が家の経済状況は多少なりとも理解してくれている。

離婚したばかりのころは注文用紙をもらうたびに買いあたえていたが、

すっかり主婦の感覚が身に付いた父親は、

一度しか読まない本を買うのはもったいないと思うようになっていた。

もっとも気に入れば何度も読み返すのだろうけど、

それは読んでみないとわからない。

「そうか、でも悪いけど図書館で借りてくれないか。」

 いつもならそう言っているのだが、その日はちょっと違った。

息子の読みたいという小説に興味があったからだ、

今まで興味がなかったわけではない。

彼の本に目をとおしたことはあるものの、正直言って中年世代の自分には読み

応えを感じさせてくれるものではなかった。

しかし、中学2年生ともなれば少しは大人びたストーリーを好むはずだ。

ぼくは一計を案じた。

「古本でもいいか?」

 息子はすこし意外そうに顔を見あげて言った。

「読めるならなんでもいい。」

 最近は新刊でもネットオークションに出品されるケースも少なくない、

読み終わったらすぐに出品したほうが高値で落札されるのだろう。

だが彼の希望した本はそれほど新しいものではなかった。

 その本はすぐに見つかった、『エンジェル』 作家は石田衣良。

「イシダ、キヌヨシ・・・?」

 恥ずかしながら、キヌヨシではなくイラと読むのだということは

本が届くまでわからなかった。

『投資会社のオーナー掛井純一は、何者かに殺され、幽霊となって甦った。

死の直前の二年分の記憶を失っていた彼は、真相を探るため、

ある新作映画への不可解な金の流れを追いはじめる。

映画界の巨匠と敏腕プロデューサー、彼らを裏で操る謎の男たち。

そして、一目で魅せられた女優との意外な過去。複雑に交錯する線が

一本につながった時、死者の「生」を賭けた、究極の選択が待っていた。』

 なるほど、おそらく息子は『幽霊となって蘇った』という部分に

強くひかれたのに違いない。

たしかに面白く一気に読み終えてしまったが、

ぼくが涙をこぼしてしまったのは『約束』という短篇集のほうだ。

石田衣良作品が数冊まとめて出品されていたのでそれを落札した、

その中の一冊である。

作品の内容は、他の誰かがブログなどで書いているだろうから

あえて紹介しない。

ただ、読み終わったあと、自分が今どんな顔をしてるのかと、

ふと思って鏡を覗き込んだ。

案の定、充血した目、泣いてるくせにちょっと笑ってる変な中年の顔である。

たぶん、いや、間違いなく、気持ち悪い顔だ。

『苦しみから立ちあがり、もういちど人生を歩きだす人々の姿を鮮やかに切り

取った短篇集。たくさん泣いたあとは、あなたの心にも、明日を生きるちいさな

勇気が戻っているはず。 解説:北上次郎』

 今はどん底ではない、明日を生きる大きな勇気だって、ある。

だけど、なんだろう・・・?

「つんさんは、前向きすぎる!」

 いつか言われた言葉、すぎるのがなぜいけないのか、わからなかった。

人の苦しみがわからない、お気楽すぎる、とでも言いたかったのだろうか。

 自分に負けないことばかり考えてきた、どんなこともプラス思考でいこう。

辛くたって、笑ってやれ・・・

でも、いっぱいいっぱいになって子供達に厳しくあたることも少なくなかった。

ここらで少し生き方を変えようか。そんなふうに思ったのは初めてだ。

 壁は、乗り越えるか、ぶち壊すかしてきたけど。

回り道するって方法もあるし、まったく別の道を選んだっていいじゃないか。

生き方というか、力の抜きどころを変えてみようと、たった三歳だけ年上の、

この作家の作品に触れて思ってしまったのである。

 そして、おそらくこれからは文章も影響されていくかもしれない。

いや、すでにかなり影響されてる。(笑)

いやあ~、小説って、本っとにいいもんですねぇ~・・・

ああ、最後にスベるこのクセ・・・何とかならんかな・・・(爆)

|

« お弁当箱 | トップページ | 夏の終わり »

コメント

とおりすがりのCHANELです。

石田衣良さんを、今ちょうど読みはじめている私です。

「恋はあなたのすべてじゃない」

つんさんのブログ・・・いろんな事を考えます。

ゆっくり また来させてね。

投稿: CHANEL | 2009年7月 9日 (木) 17時33分

>CHANELさん
とおりすがっていただきありがとうございます。
ブログ開始時より考え方もけっこう変わってきていますが、
おおむね思いつきで書いております(笑)
またよかったらおこしくださいね。
「約束」では「ひとり桜」が一番好きです。
一番泣いたのは「ハートストーン」ですがcoldsweats01
「恋はあなたのすべてじゃない」今度読んでみますね。

投稿: つん | 2009年7月10日 (金) 08時55分

「恋はあなたのすべてじゃない」って
小説じゃないんですよ。
なんとなく手にとってしまいました。

本を読むのは好きです。
「約束」今度読んでみますね。

『自分に負けないことばかり考えてきた、どんなことも プラス思考でいこう。』
『ここらで少し生き方を変えようか。』

私は
「ここらで少し生き方を変えよう。」と思い
「自分に負けないこと。
 自分を信じること。
 どんなこともプラス思考でいこう。」
と思いました。
つんさんとは順番が逆だったのかな・・・。

『力の抜きどころを考える。』
そうですね。

無理をしないで、笑顔でいたいです。

投稿: CHANEL | 2009年7月10日 (金) 12時11分

>CHANELさん

女性向けの本でしょうか、そんなレビューがamazonにありました。
でもちょっと興味アリです。

自分に負けないことも、自分を信じることも、プラス思考も、
無理をしないことも、全部大事だと思います。
それができたら自然に笑顔になるのでしょうね。

「退かない、負けない、あきらめない」がボクのポリシーでしたが、
それに「急がない」をトッピングしていこうと思ったんです。

人生まだまだ先は長い・・・つもりですので(笑)

投稿: つん | 2009年7月10日 (金) 13時35分

つんさんの言われるとおり人生はまだまだ長いですね。 

『自分に負けないことも、自分を信じることも、プラス 思考も、
 無理をしないことも、全部大事だと思います。
 それができたら自然に笑顔になるのでしょうね。』

そうですね。ありがとうございます。

突然だけど、つんさん頼りにしてます。

いきなり知らない人に頼りにしてます。
なんて言うのおかしいけど・・・。
言われるのも変な気分だろうけど・・・。

とおりすがってよかった。って思ってるところです。
ホントありがとうございます。

P.S.
つんさんのずぅ~っと前からのブログをよんでいるところです。
涙があふれたり、笑ったり、考えたり・・・。
すべての日々を読み終えるにはもう少し時間がかかりそうです。

投稿: CHANEL | 2009年7月10日 (金) 20時17分

>CHANELさん

勇気を出して現実と向き合うために始めたブログですが、
誰かが元気になってくれるなら、それは嬉しい事です。

過去の日記にもコメントをたくさんいただきまして、
ちょと恥ずかしい気もしますcoldsweats01
ひとつひとつにお返事したいのですが、
ごめんなさいすぐにはできそうにありません。

でもなんか、ファンレターをいっぱいいただいた気分です。
こちらこそどうもありがとう。

更新サボり気味ですが、これからもよろしくお願いします。

投稿: つん | 2009年7月11日 (土) 13時48分

わざわざ過去の日記にコメントするなんて
わかっているのに変ですよね。ごめんなさい。
私は、今、つんさんを知りました。
でも過去のつんさんも知りたくて
会いに行ったって感じです。(^^)
もう誰も来ないだろうとわかっていました。
だから1人で楽しんだんです。
誰もいなくなった校庭で、ブランコに乗ったり、
滑り台をすべったり、鉄棒にぶらさがったり。って
全部ひとりじめしたみたいでした。

憧れの先輩にメールをもらった気分でニコニコです。
ファンだからね。ふふふ。
ありがとうございます。
こちらこそ、また来させてください。

おからだ たいせつに。

投稿: CHANEL | 2009年7月11日 (土) 17時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/138774/45388810

この記事へのトラックバック一覧です: 約束:

« お弁当箱 | トップページ | 夏の終わり »